「'04年以降、韓流ドラマの買付け額は、10倍以上に跳ね上がりました。その分岐点となったのが、『冬ソナ』がNHK-BS2で放映された'03年でした」
と語るのは、ドラマ・映画配給会社『SPO』マーケティング部長として、韓国、台湾などの映画・ドラマの買い付けを担当する櫻井由紀さん。
その後、日本側はイ・ビョンホン(37)の『オールイン』、ソン・スンホン(31)の『夏の香り』など、韓流スターの過去の出演作を買い付ける購入ラッシュが巻き起こった。
「当時は1話当たり、たったの数十万円もザラでした。『冬ソナ』は1話50万円程度で取引されたそうですが、DVDだけで累計40万セットも販売したそうです」(韓流コメンテーターのソン・ユジュン氏)
アジア全体に波及した韓流ブームのおかげで、STARのギャラも大幅アップ。それに伴い、ドラマの制作費と買付け額も上がったのだ。
「それでも、日本が韓流ドラマの放映権やビデオ権を購入するのは、韓流ドラマが優れたコンテンツだから。
現在、日本国内での海外映画の市場は冬の時代。そのなかで安定した収益性が見込めるのが、韓流ドラマなのです。
ブームは過ぎ去ったといわれますが、今でも、第2次ブームが続いているんですよ」(前出・櫻井さん)
今回の『韓ナビ!』では、韓国の報道を中心に本誌が独自に韓流ドラマの日本買付け額を算出。高額ランキングTOP10をご紹介! あわせて専門家に、韓流ドラマ買付け事情を解説してもらった。
1位は『太王四神記』の1千100万円!
版権購入の際は、1社がテレビでの放映権とDVDの販売権をセットで購入することが基本だが、『太王~』は、放映権がNHKに、DVD権がエイベックスにと、別々に販売されたケース。『太王~』には、ほかにも例外があった。
「従来、ドラマは韓国のテレビ局が販売していました。『太王~』は、制作会社であるキム・ジョンハク・プロダクション側が権利のすべてを管理するという初の試み。今後、ほかの制作会社も販売に参入する可能性を広げた、記念すべき作品です」(櫻井さん)
実は『太王~』の放映権購入に際して、大手の民放局がNHKより高額を提示していたという。なぜNHKに?
「韓国では『冬ソナ』をヒットさせたNHKに、絶大な信頼を寄せています。また日本唯一の公共放送機関というブランド力にも惹かれているようです」(櫻井さん)
買い付けの際、俳優をランク分けして、契約金の参考にする場合もある。
「Aクラスは、ソ・ジソブ(30)、パク・シニャン(39)など。トップのSクラスはヨン様だけ」(ソン氏)と言うから、この金額にも納得か。
2位は8月に韓国で放映予定のスンホン主演『エデンの東』の1千万円。3位は6月17日に放映が始まったばかりの『食客』、そして歴史ブームを作った『朱蒙』の800万円。日本の配給会社は今後も、歴史モノに大注目しているという。
「『食客』は、キム・レウォン(27)の入隊前の最後の作品だと噂されているもので、話題性も抜群です」(ソン氏)
『エデン~』『食客』、そして、1位の『太王~』には、最近の買い付けの傾向の共通点がある。それが、“先物買い”だ。
「この3作品は、クランク・イン前に、韓国側が、出演者、シノプシス(筋書き)などの判断材料を日本側に提示して、投資を募ったんです。契約事項に、版権も組み込まれているのです」(ソン氏)
購入するタイミングは、どんどん早くなっている。
「放映後のドラマを購入しようと、局にコンタクトを取っても、すでに他社が契約していたというエピソードは、数限りなくあります。
韓国で放映中の作品を見て放映終了前に購入したり、放映前にシノプシスを読んで購入するケースも増えています。もちろん、それでも他社に先を越される場合もあります。大げさな例では、主演だけが決まった段階で、局から誘いが来ることもあります」(櫻井さん)
5位は700万円で、『宮廷女官チャングムの誓い』『宮』『オンエアー』など5作品。
「『オンエアー』も3、4話を見た段階で契約が結ばれたそうです。パク・ヨンハ(30)にとって、『冬ソナ』以来、約5年ぶりの韓流ドラマ出演。放映前から注目はされていましたが、未知数の状態。韓国での反響を確かめての購入だったそうです」(ソン氏)
放映中に契約したという『宮』はDVDのボックスセット(ⅠとⅡ)で、累計6万セットを売り上げた。主演のチュ・ジフン(26)は、韓国で放映当時の’06年ごろは、日本ではまだ知名度は低かった。
「必ずしも、知名度は必要ないのです。買い付けの際、広い市場性が判断の大きなポイント。『キャンディ・キャンディ』に代表されるように、非日常のメルヘンものは、韓流ドラマの王道です。
皇室の末裔の王子様を現代劇で描いた、『宮』の“ありえない”設定にヒットの予感がしました」(櫻井さん)
10位タイが、表の7作品で600万円。
意外にも、買い付ける際、韓国での視聴率は参考程度だという。
「視聴率は意識していますが、すべてではありません。本国で30%を超えても、日本では苦戦した作品もあります。
韓国はブロードバンド大国。局の子会社が運営しているサイトでは、1話あたり100円程度で購入して視聴できるんです」(櫻井さん)
ネットからの購入は視聴率には加味されない。テレビを見るのは年配の方が多いため、必ずしも、韓流ファンの女性の好みとマッチしないのだ。
「韓流ファンの方の意見がいちばん参考になりますね。ドラマの感想を書いたファンのブログも参考にさせていただいているんですよ」(櫻井さん)
ファンの意見は絶大なのだ。