「今年、国内で制作する放送コンテンツについて、制作費35億ウォン(2億5千900万円)を援助します」
今年3月、韓国放送映像産業振興院(KBI)のチェ・ヨンホ副院長は、不況下の韓流テレビ界への緊急支援策を発表した。
世界不況のため、韓国のテレビ業界も岐路に立たされている。大きな収入源となる広告収入が減少し、コストカットが叫ばれているのだ。
特に、多額の資金を必要とする韓流ドラマ界は波乱のまっただ中にある。
「各局、ドラマ枠を縮小する傾向にあります。KBSは、今放映中の『青春礼賛』を最後に朝の連ドラをやめて、低コストの教養番組へシフトするそうです」(韓国紙記者)
ドラマ作りの苦境のなか、STARたちと現場スタッフは、どんな工夫をして危機を乗り切っているのだろうか。
今回の「韓ナビ!」では、経費節減に工夫を凝らす韓流ドラマの現場をウオッチ!
「韓国では一般的にドラマ制作を担当するのは制作会社です。1話あたりの制作費は2億4千万ウォン(1千800万円)程度ですが、局から制作会社へ支給されるのは1億ウォン(約740万円)程度。
差額分は、海外への版権輸出や音盤制作で補われてきたんですが、昨今の不況により差額分の収入が不安定になってきているんです」
と語るのは、MBCの子会社『ツアー・カップル&カンパニー』の代表で元芸能記者のファン・グァンヘ氏。
資金繰りが悪化し、倒産する制作会社も相次ぐほどだが、そのしわ寄せは、俳優やスタッフにも及んでいるという。
「今年1月には、制作会社の経済的な問題で『彼を愛しています』が突如、制作中止になったのです。
MBCでの放映が迫っていただけに、関係者ならずとも、ショックは大きかったです」(前出の記者)
ギャラの未払いも大きな問題となっているそうだ。
現在放映中で、視聴率40%を記録した『妻の誘惑』(SBS)は、未払いが発覚したばかり。昨年放映の『彼らが生きる世界』(KBS)でも、ギャラの一部が滞っていた。
「主演のヒョンビン(26)、ソン・ヘギョ(27)側は、『特別扱いはお断りします。残りのギャラは、ほかの俳優、スタッフと一緒のタイミングで受け取りたいです』と語り、テレビマンの感動を誘いました」(前出の記者)
ロケ弁は、5千ウォン(370円)程度へ
一方で、「STARへの高額ギャラを下げることが、最大の経費削減につながる」(前出のファン代表)ことも事実。
昨年12月、『韓国テレビドラマPD協会』主催の『テレビドラマの危機と出演料正常化セミナー』では、STARの出演料が明らかにされた。
発表された内部資料によると、1話あたりの出演料のトップはヨン様(36)で『太王四神記』(’08年MBC)の2億5千万ウォン(1千850万円)。続いて、パク・シニャン(40)の『銭の戦争』(’07年SBS)で、1億5千500万ウォン(1千150万円)、ソン・スンホン(32)の『エデンの東』(’09年MBC)で7千万ウォン(520万円)、クォン・サンウ(32)の『BAD LOVE~愛に溺れて~』(’08年KBS)で5千万ウォン(370万円)だったという。
「同協会で、俳優の出演料の上限を1話1千500万ウォン(110万円)にするという取り決めがなされました」(前出の記者)
サンウは4月から放映予定の『シンデレラマン』(MBC)で主演に抜擢された。
「彼はオファーを受けるにあたり、前作『BAD LOVE~』の3分の1以下の出演料で合意したそうです」(前出の記者)
サンウは韓国紙の取材に対し、次のように語っていた。
「ドラマ制作の厳しい現実は、十分に理解しています。出演料の上限にも積極的に賛同するつもりです。
出演料の10%は、芸能人ボランティア団体『タモサ』に寄付する予定です」
リュ・シウォン(36)もサンウの勇断に追随するという。
4月放映予定の『シティーホール』(SBS)は彼にとって4年ぶりの韓流ドラマ復帰作。破格の出演料を得ることもできたはずなのに、取り決め内でサインしたそうだ。
「俳優陣に続き、超人気と言われる作家のギャラも、1話2千万ウォン(140万円)以内に収まりそうです」(前出のファン代表)
STARたちのそんな覚悟もあってか、現場も知恵を絞っている。
「放送中の歴史ドラマ『』で見せた数万人の兵士の大群は、実はエキストラ50人とCGで演出したんですよ」 と語るのは、SBSのジョ・グァンヒ氏。
現在、SBSでは、ソ・ジソブ(31)、シン・ヒョンジュン(40)主演の『カインとアベル』が好評放映中だが、現場は一丸となって頑張っているようだ。
「韓流ドラマ界では、通常、助監督1人の下に4~5人のスタッフがついて1チームという編成ですが、最近はスタッフが半減しているんです。
たとえば、いまは教養番組では、1人でカメラ、照明などすべてを兼任することもザラなんですよ」(ジョ氏)
ドラマでも、場合によってはディレクターが照明を兼任することもあるようだ。
「大御所を除く脇役には、専門のスタイリストをつけない傾向にあるようです。代わりに、局が用意した職員が、衣装選びやメークにあたるようです」(ジョ氏)
コストカットは、ついに“食”にまで及んだ。
「できたてご飯を提供する、韓ドラでおみのパブ車(移動食堂車)の利用が減っているんです。1食あたり2万ウォンするパブ車に代わって、5千ウォン程度のロケ弁になっているようですね」
と語るのは、大手芸能プロダクション『TRIFECTAエンターテイメント』のイ・デオク理事。
理事によると、こんな涙ぐましい努力をしている制作会社もあるとか。
「セット代節約のために、スタッフ個人の部屋を借りることも実際に行われているようです」
さらにはこんなウルトラCも!?
「撮影が深夜0時を過ぎると人件費が2倍になってしまうので、午後11時59分に合わせて終了することが多くなりました。それでも時間が足りない場合は、しょうがなく徹夜ですが(笑)」(前出のジョ氏)
韓ドラ界の台所事情は厳しいようだが、知恵と体力全開で現場は頑張っているのだ。