「各劇場の観客数が毎日オンラインで集まるシステムによって集計しています」と言うのは韓国内の観客動員数を調査する『韓国映画振興委員会』政策研究所のユ・ヒョンジン研究員(34)。「現在、国内の約200の映画館におよそ1千300スクリーン、ソウルだけで66館、415スクリーンあるんです」『韓国映画振興委員会』が集計した、歴代韓国映画観客動員数ベスト20がコレ! 400万人以上が見ていないとランクインできない厳しさだ。ちなみにヨン様の『スキャンダル』は惜しくも23位(353万人)だった。日本でも大ヒットした『私の頭の中の消しゴム』が52位(256万人)というから韓流映画の底力がわかるというもの。
輝ける第1位の『グエムル漢江の怪物』は、ソン・ガンホ(40)主演のパニック映画。韓流映画がヒットする要素として、従来は1・キャスティング、2・大衆が好むテーマ、3・製作費の大きさが“三種の神器”と呼ばれていました。しかし上位作品は1~3がすべて当てはまっているわけではありません。逆に“当たらない素材”という過去の既成概念を、見事に破るだけの新鮮度を持っていたものが大ヒットしていたのです」と話すのは、ネット人気ナンバーワンの映画サイト『シネソウル』を運営する韓流映画評論家のキム・ジナさん。1位『グエムル』のガンホは、8位の『シュリ』、10位の『JSA』、13位『殺人の追憶』の計4作に登場。3千万人も動員したヒットメーカー。監督は、『殺人の追憶』で頭角を現した“韓国のスピルバーグ”ポン・ジュノ”。前出のキムさんは言う。「ジュノ監督の根底に流れるモチーフは、一貫して“社会はなぜ個人を救えないのか”という素朴な疑問。『グエムル』でも、そのスタイルに変化はありませんでした」2位の『王の男』は時代劇。「製作当初はあまり話題になりませんでしたが、フタを開けてみればイ・ジュンギの中性的な魅力が中高生に口コミやネットの書き込みで爆発的に広がりロングランになりました」(キムさん)韓国のアカデミー賞『大鐘賞』では、最優秀作品賞など10部門を受賞。カム・ウソン(36)とイ・ジュンギ(25)の出世作となったのは有名だ。
3位のご存じ『ブラザーフッド』はチャン・ドンゴン(35)とウォンビン(29)が出演した朝鮮戦争下の兄弟愛を描いた歴史大作。「チャン・ドンゴンもソン・ガンホに匹敵し、『友へ チング』(5位)とアクション巨編『タイフーン』(19位)の3作だけで2千400万人も動員しています」(関係者)そのドンゴンが、裏社会に巻き込まれていく青年を熱演。スターへの仲間入りを果たした作品が、5位の『友へ チング』だったとキムさん。「初挑戦の汚れ役で、それまでの“美男子スター”という肩書を拭い去りましたね」4位の『シルミド』は南北問題を扱った涙の大作だ。「歴史の陰に隠されていた事実を社会に知らしめた作品。韓流映画史上、初めて観客動員1千万人を突破した作品でもあります」(キムさん)6位の『トンマッコルへようこそ』は、山奥の架空の村“トンマッコル”の村人と、韓国・米国・北朝鮮の軍人の交流を描いたファンタジー。韓国兵士役のシン・ハギュン(33)も本誌取材で『分断されても心は一つ』と語っていた。7位の『いかさま師』は、『マラソン』(15位)の演技が光ったチョ・スンウ(27)主演。3年間貯めたお金をイカサマ賭博ですった家具職人が、自分もイカサマ師に仲間入りするという漫画原作映画。8位は韓流作品の元祖ともいえる『シュリ』。韓国の諜報部員と北朝鮮の工作員の悲恋を描いた‘99年の公開作。「洋画に押され瀕死の危機に陥っていた韓流映画が息を吹き返す分岐点になったのがこの作品です。ベスト20はすべて‘99年以降に誕生しました。金正日主席も見たと伝えられています」(キムさん)イ・ビョンホン(36)とイ・ヨンエ(36)が出演した10位の『JSA』も、主題は南北問題。北朝鮮の兵士と韓国軍兵士の心の交流を描いた。大ヒットとなりましたが、あまりに政治色が強いため、制作中も完成を危ぶむ声が囁かれました」(韓国映画関係者)
以降のランキング入り作品に続出するのはコメディだ。『Two師父一体』(9位)は、ヤクザが大学生になる学園もの『マイ・ボス・マイ・ヒーロー』(昨年、日本でも長瀬智也主演でリメーク)の続編だ。11位の『家門の危機』は、ヤクザが追われていた女性を助けてみると、暴力団対策の検事だったというシン・ヒョンジュン(39)主演のラブコメ。12位の『花嫁はギャングスター』も、武闘派の女組長が末期がんの姉から「あなたの花嫁姿が見たい」と願われて結婚するアクションコメディ。ヤクザの娘がベンチャー企業のCEOと結婚を進めていく『大変な結婚』(14位)。クォン・サンウが教え子を演じて、家庭教師役のキム・ハヌルと共演した『同い年の家庭教師』(16位)。そして“猟奇的”ブームを巻き起こしたチョン・ジヒョン主演の『猟奇的な彼女』(17位)、と日本でもお馴染みの作品がズラリと並ぶ。10年ぶりに再会した高校の同級生2人と1人の女性との三角関係を描いた18位の『風林高』に、癒し系のヒューマンドラマ『おばあちゃんの家』(20位)と、ベスト20は全ジャンルを網羅。あなたは何作見たことありますか?