6月1日の『太王四神記プレミアムイベント』にも登場した監督&キャスト6人を本誌は個別取材。収録秘話&プライベート初告白!
イ・フィリップ(27)=チョロ役
「来日直前の「ゴリラ」誕生会ではヨンジュンさんからレンズ2本を…」
「あの仮面は、僕の顔の型に合わせて作った、世界にひとつだけのもの。鉄製だからすごく重いんですよ(笑)。それに視界が遮られて、目がほとんど見えなくて。馬に乗って、刀を振り回すシーンは、とっても怖かったです」そうロケを振り返るのは、四神の1人・青龍のチョロ役を演じたイ・フィリップ(27)。自分の仮面姿を初めて見たときは、「『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスのようだった」と笑うが、仮面の奥には、こんなに甘いマスクが隠されていたのだ。
アメリカで育ち、ジョージワシントン大学院を卒業した彼にとって、今作が俳優初挑戦。もともと、ショートだった髪も、役のために伸ばした。今ドラマの主役・ヨン様は俳優として人間としても、よきお手本だという。
「いつも気にかけてくださるんです。日常の行動や、他人へ心配りをする姿を見るだけで、勉強になります。尊敬する先輩であり、本当のお兄さんのような存在です」
クランクアップ後も2人の交流は続いていて、よく酒を酌み交わしているそう。
「お酒をおいしく飲むには、雰囲気が大切だと思うんです。飲む相手によって、味わいが違ってくると思うんですが、ヨンジュンさんと飲むお酒は格別ですね。プライベートな会話もするんですが、お互い恋人がいないので、女性の話はしないんです。僕のタイプですか? 性格のいい人が一番ですよ。すごく年上の女性? ケースバイケースですね(笑)」
フィリップの誕生日だった5月26日は、『ゴリラ』の2階を貸し切って、祝ってもらったという。
「オ・グァンロクさんやパク・ソンウンさんなど、約30人の方を集めてくださいました。ヨンジュンさんからは、キヤノン製のレンズ2本をプレゼントしていただきました。僕も写真が好きなんですよ」
最後は笑顔でこう締めた。
「『太王四神記』に、関心を持っていただき、とてもしいです。これからも応援してください。頑張ります!」
“仮面姿の素顔”は、最後まで謙虚だった!
パク・ウンソン(35)=チュムチ役
「太王四神記」共演者が新恋人…「ヨンジュンさんとワインで乾杯!」
「ヨンジュウゴ? フォーティ・ファイブ? え~っ!」
ソファの背に体を投げ出して、笑うパク・ソンウン(35)。“ドラマでは45歳に見えた”という記者の率直な感想が、よほどショックだったよう。目の前の彼は、とてもフランクで、都会の洗練された雰囲気がする。一方、彼が演じたチュムチ(四神の1人・白虎)は、奇抜な格好で斧を振り回すという豪快な役。年の差も含めて、別人と思えるほどのギャップがあるのは、役に徹していたから。
「キルギスタンで初挑戦した乗馬は、たったの3日練習しただけで本番でした(笑)。斧を振りながら、片手で手綱を操るのは大変でしたね。ロケ中、硬い木製の斧を、6本も壊してしまいました」
“九死に一生”の落馬も経験した。背後からは馬の大群が迫り、危うく下敷きになりかけたのだ。
「『チュムチが落ちた!』と大騒ぎになりました。僕はアクション・スクール出身。プライドが許さないので、すぐに馬に乗って、『もう1回やります』って、平気な顔で答えました。その夜のシャワー中、背中に木のとげが何本も刺さっているのに気づきました。イタイ、イタイ(笑)」
撮影が2ヵ月間も、中断することもあって、ストレスもあったという。
「完成できたのは、ヨンジュンさんと監督の間に、強い信頼関係があったから。僕たちも、励まし合いましたよ。ヨンジュンさんは、僕が演技しやすいように、自分がカメラに映らないカットでも、地面に寝てくれたこともあるほど役者魂がある。妥協することを知らないんです」
辛い現場で、同じ釜の飯を食べながら、結束を固めた2人。今でもグラスを傾けながら、親交を深めている。
「ヨンジュンさんとは、今でもよく会ってますよ。自宅に招かれたときは、ワインが何十本も並んでいました。彼はワインの造詣が深いけど、僕は飲む専門(笑)。個性的な『マルベック』の赤ワインをもらったこともありますよ」
大阪でのイベントでは「撮影での初キスを果たしたタルビ役のシン・ジョンウン(34)と、プライベートでも恋に発展した」と告白して、観客を沸かせていたソンウン。
赤ワインはヨン様からの恋愛成就のお祝いだったのかも。
キム・ジョンハク(56)監督
「撮影ストレスで眠れぬヨン様と睡眠薬の譲り合いをしてました」
今回の『太王四神記』を監督・制作したキム・ジョンハク(56)は、最高視聴率64%を記録したドラマ『砂時計』('95年)など数々の名作を生み出してきた韓国芸能界の大御所。実力主義の現場で、30年近く第一線で活躍してきた。激が飛ぶことを覚悟して記者はインタビューに臨んだが、
「撮影中、みんなにサムギョプサルと焼酎をごちそうしていたので、今回の大阪のイベントに招待されたんでしょう。その夜は、ホテルの中華料理で打ち上げをしましたよ」と微笑む。意外に気さくな人柄に記者はひと安心。
「私は元来、非常にユーモラスな性格なのです。冗談を言って、とにかく明るい雰囲気作りに徹していました」
サラリと答えるが、『太王四神記』の放映までの道のりは険しかった。度重なる放映延期で一部で「本当に完成できるのか」との疑問の声もあった。昨年6月、報道陣を集め、異例の謝罪会見を開いて、監督自ら遅延のお詫びをした。昨年9月には、監督はロケの帰りに交通事故に見舞われて緊急入院。手術は無事成功したが、数週間、現場を離れざるをえなかった。念願の第1話が韓国で放映された、約1週間後のことだった。
「ふだん、私は家に何日いても一本もタバコを吸わないんですが、今作では1日20本以上も吸っていました。『砂時計』の撮影は肉体的な過酷さだけでしたが、『太王四神記』では、さらに精神的にも追いつめられたんです」
全責任を追う指揮官は体力的負担とストレスで限界寸前だったのだ。重圧はヨン様も同じだったという。
「私とヨン様は、別々の部屋で点滴を打ちながら、ロケを続けていたのです」
監督は今作の撮影で初めて睡眠薬も服用したという。
「いままでに睡眠薬に頼ったことは一度もありませんでしたが、今作の撮影中に飲み始めたんです。ある日、ヨン様に『この睡眠薬が効くから』と渡したんです。数日後、今度はヨン様が私に『アボジ(親父)、こっちのほうがもっと効きますよ』って、持ってきてくれたんです。ハハハ」
今では懐かしい思い出として笑い話のように語るが、計り知れない苦労があったのだ。ヨン様とは「親子や友達のような関係」だという。
「ただし撮影が始まると、とにかく意見をぶつけ合っていました。そのたびに解決していたので、後腐れがないんです。いい作品を作るためには、ケンカも必要なんです」
監督は取材中、ヨン様のことを最後まで「ヨン様」と呼んでいた。それは記者が日本人だから?
「ハハハ。普通は、名前や役柄で呼ぶんです。彼に関しては、なぜかはじめにヨン様と呼んだら、その後も、そう呼ぶようになって。スタッフ皆、ヨン様と呼んでいるんです」
監督にはすでに次回作のオファーが殺到中だという。監督は「あくまでも予定ですが」と前置きして、『太王四神記』のシーズン2の構想も記者に打ち明けた。
「次回は現代劇を考えています。四神とタムドクのような指導者が、今の時代に舞い降りて、世界を平穏にするのはどうかな……と考えています。全アジアを舞台にした作品にしたいので、もちろん日本でのロケも考えられます。続編では、またヨン様と一緒にやりたいですね。私は今回、制作に初挑戦しました。だけど、資金繰りが大変で、もう制作は遠慮したい(笑)。これからは、いままでどおり、演出一筋でいい作品を作っていこうと思います」
重圧から解放された監督は、東京の空を見上げて温和な笑顔を浮かべていた。
ムン・ソリ(33)=キハ役
「私が収録中に結婚したとき、新居にヨンジュンさんを招待したんです」
「冷え性なので、冷たい水は飲まないんです。お酒は日本酒やコニャックのホット。飲んで体が火照ったら、アイスクリームは食べますけどね」
火天会のキハ役のムン・ソリ(33)は韓国のアカデミー賞・大鐘賞で主演女優賞に輝き、ベネチア国際映画祭でも受賞歴がある演技派。テーブルに置かれた陶器のグラスには白湯が注がれていた。こまやかな体調管理が彼女の二重ロケ生活を支えていたのだ。
「『太王四神記』のロケが長引いて、実は途中から映画『私たちの生涯最高の瞬間』の撮影も同時進行していたんです。当時は体調管理なんて、考えられる状況ではありませんでした。移動の飛行機内で、ちょっと仮眠を取るだけで、現場を移動していたんです」
彼女は『太王四神記』収録中の'06年のクリスマス・イブに映画監督のチャン・ジュンファン氏(37)とゴールイン。現在は彼女の両親、2匹の愛犬とともに暮らしている。
「ロケの間は夫とは、すれ違いの日々が続いていました。久しぶりに会うと、交際当時のようにドキドキするんです。あまり会わないほうがいいのかしら。ウフフ」
と冗談っぽく笑う。記者は彼女に『ジョンハク監督は、現場ではユーモアを交え雰囲気をなるべく明るくしようと言っていた』と伝えたところ、
「現場を仕切る能力があると感じました。韓国でナンバーワンの監督だと思いますよ。ただ、ユーモアというより、怖かったという思い出が印象に残っていますけどね」
と苦笑い。映画でキャリアを積んでいるソリだが、ドラマは今作が初めて。ヨン様とも初共演だが、プライベートでは意外にもこんな縁が―。
「夫とヨンジュンさんが、以前からの知り合いで。結婚したときも、新居に招待しました。中身は内緒ですが、プレゼントもいただきましたよ」
さらに、ソリはヨン様と同じ美容院『ジョンセンムル』を御用達にしていた。
「偶然なんですけどね。美容院には、日本からたくさんのヨンジュンさんファンがいらっしゃってるんです。『ムン・ソリさ~ん!』と声をかけてもらってます。スッピンで行くときは、照れくさいです(笑)」
韓国では、年下の女性は年上の男性を「先輩」や「オッパ(お兄さん)」と呼ぶ。
「でもヨンジュンさんは、『僕のことをヒョン(兄貴)って呼びなさい』って言うんです。ヒョンは男同士の言葉。ヨンジュンさんは私のことを女と見ていないんですよ(笑)」
ロケ終了翌日、映画祭の審査員として招待されたエジプトへ。映画を見ては寝る、という暮らしを5日間、繰り返した。残りの5日間でナイル川周辺を旅行して、ようやくリフレッシュできたという。ソリは今まで、夫の監督作品には出演したことがない。
「『世界で最高に素晴らしいシナリオを書けたら、君をキャスティングするよ』って、約束してくれています。でも、そのときは、もうおばあちゃんになってるかも(笑)」
オ・グァンロク(45)=ヒョンゴ役
「済州島ロケ中の不安は8年間続けた家庭菜園でした」
「最初は、眉毛をつけたり描いたりで、メークだけで2時間も費やしていました」
通訳を気遣って、一言一言、ゆっくりと語りはじめたのは、ヒョンゴ(四神の1人・玄武)を演じたオ・グァンロク(45)。
「限られた時間で、過去にない壮大な規模のドラマを作る過程では、心に余裕がなくなることが、最も大変でした」
みんなと酒を飲むことはあっても、辛さを酒でごまかすことはしなかったという。
「ストレスを感じたときは、よく1人で散歩をしていました。鼻先から空気を吸うと、とてもすっきりした気分になって、頭の中が整理できるんです」
8年前から、ソウルの自宅ではじめた家庭菜園での“土いじり”も心安らぐひととき。
「ちょうどこの部屋の広さくらいでしょうか」
と手を広げてみせる。30㎡くらいの菜園ではキュウリ、唐辛子、大根、白菜、カボチャ、トウモロコシ、ゴマの葉、ナスなどを栽培しているそう。
「今年はウリの栽培もはじめたんですよ。済州島のロケ中は、野菜のことが心配でした。ロケから帰ると真っ先に、雑草をむしったり、水をあげたりしていたんですよ」
イ・ジア、イ・フィリップなどの新人俳優から、いい刺激を受けたことも、ハードなロケを乗り切れた一因だった。
「ヨンジュンはとても純粋な人物。それは長い間、付き合ってみると自然にわかってくるものですよ。スタッフへの配慮も行き届いている。言葉遣いや人との接し方が、丁寧なんです」
彼は、ヨン様の徹底した自己管理、勉強を惜しまない姿勢、最善を尽くす姿などを、目の当たりに。演技に対する熱意にも心打たれたという。
「私が彼を指導するということはないのです。皆と、どのように演じたほうがよいのか議論はしていました。でも、結論を出すのは、個々の俳優。《年輪を重ねた逞しい木にも、小さな草花にも、やがて実りの季節が訪れる》役者も植物と同じ。ベテランも新人も関係ないんです」
と、含蓄のあるセリフを言う。グァンロクは、役者でもあり詩人でもあるのだ。
「ドウイタマシタ? どういたしまして(笑)」
ヒョンゴのおとぼけキャラを彷彿させる場面もあった。低い声が魅力的で、終始ダンディなオジサマだった。
イ・ジア(27)=スジニ役
「日本語の先生はダウンタウン、得意な料理は親子丼です!」
「アメリカに住んでいたころ、日本人の友達と会話しながら、勉強していたんです」
日本語でそうよどみなく話すのは、ヒロインのスジニを演じたイ・ジア(27)。ジアは英語、韓国語を操るバイリンガル。日本語も通訳を介さずに、スラスラと答える場面もあって、ビックリ! 本誌記者は、「特技の欄に『日本語』と書いたほうがいいのでは」と勧めたところ、『朝鮮日報』(6月4日付)の《イ・ジア、インタビューで語学力をアピール》という記事で記者の発言が紹介されていた!
「日本のドラマも好きなんですが、『ダウンタウン』のコントDVDを見て勉強しています。『なんでやねん』とか、関西弁も、おもしろく勉強できるんですよ(笑)」
今作は、30回にわたるオーディションをくぐり抜け、ヒロイン役を射止めたデビュー作。すべてが“初体験”だった。
「クランクインの1年くらい前から、練習しました。アクションシーンが多いので、武術や殺陣、乗馬など学ぶことが多くて、大変でした。特に、弓矢の練習は何百回、何千回と、きりがないくらい。毎日、筋肉痛で、腕に筋肉がついてしまいました(笑)」
睡眠不足の日々で、体力を維持できたのは、“食”のおかげだという。
「ご飯をたくさん食べて、運動しているから、終盤は短い睡眠にも慣れていました。料理が大好き。得意料理は親子丼です。お店で食べてみて、こんなふうにしたら美味しいかもって、私流のスタイルで作っているんです」
共演者にも助けられた。
「スジニは、活発で大きな声を出す役なのに、私は声が小さくて静かに話すタイプ。ムン・ソリ先輩から、大きな声を出すための、発声の練習方法を教わりました。先輩も最初は、声が小さかったそうなんです。声がガラガラにかれたときは、温かいお茶を飲んで、喉を潤していました」
ムン・ソリには、寒いロケの合間、ストーブで一緒に暖を取りながら、「自信をもって演じなさい」と、勇気づけられていたそうだ。
「ヨンジュン先輩との共演にプレッシャーを感じて最初はビクビクしていたんです。そんな私を元気づけてくださったのもヨンジュン先輩でした」
クランクアップ後は事務所スタッフと、1ヵ月間のヨーロッパ旅行を楽しんだという。
「ロンドン、フランス、イタリアなどの美術館や博物館を巡りました。とにかくユーロが高かったですね(笑)」
次回作は、7月にクランクインするMBCドラマ『ベートーベン・ウィルス』に決定! 弓矢からバイオリンに持ちかえて、ソリスト役の練習に励んでいる毎日だ。
「『太王四神記』で多くの苦労を経験したので、次回からはどんな作品でもやり遂げられそうな気がします。だけど、今はそれを繰り返せ、と言われてもできないですけどね」
苦笑いしながらも“『太王四神記』が最初の作品で本当によかった”と微笑んだ。